石造布袋像
「牛津町内には“石工平川与四右衛門”の銘が残された石仏が六体現存している。そのなかで、熊野権現社参道人口の肥前鳥居横に安置されたこの布袋像は、制作時期が最も古い元禄四年(1692年)の銘を有する石像である。
石像全体は、石の一材から彫り出している。その形状は右足片膝を立てた半跏坐を呈し、右手をその膝上に置く。背中には大きな袋を背負い、それに上体を預けるような格好である。顔部は、下膨れのふくよかな頬に大きな耳朶果を持つ。目尻はやや下がり、ロは半開きで表情豊かな笑顔を作り出す。
台座の前面には次の陰刻銘がある。
我是 布袋
大越家 殷盛
三代住
元禄四辛未天
正月廿六日
石工平川与四右衛門
この布袋像は、作風的には長崎市内の唐寺の布袋像と共通している。現在も熊野権現社を管理する後藤家の始祖である後藤遊仙(石蔵坊)の実子とされる“殷盛”という人物を檀那として中国丈化の影響のもとに、作られたと考えられる。
従って、平川与四右衛門の手による優秀なな石像というだけでなく、平川与四右衛門並びに当地が中国文化と深い関わりをもっていたことを明らかにする作品と位置付けることができる。
また、この布袋像は石工の里“うしづ”を代表する名工平川与四右衛門を探究するうえでも貴重な歴史的丈化遺産である。」
平成十三年三月三十一日指定
牛津町教育委員会
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