龍樹菩薩
「本像は、像高3.6メートルで、楠材で作られており、寄木造りである。面部でやや堅さが認められるものの大振りの衣裳を自然にまとっているなど作者の並々ならぬ彫技の程がうかがえる。頭部が体部に対してやや大きく、両耳が側頭部に平面的に密着密書して
いる。全体的に細部を省略し、目鼻だちを大きくとらえている。
納衣の両肩の上に衣をまとう南北朝時代の特徴を備えている。
一方、膝頭の中央前部が直線となっておらず、膝頭の下部も内側に切れ込むという伝統性も兼ね備えている。
以上のことから、本像の製作年代は、室町時代の前期と推察される。又、一説には次のようなことが伝えられている。
昔、有明海がこの辺まで入り江となっていた頃、海中から五色の光が立ちのぽっているのを発見した漁民たちが集まって笛を吹き、鐘をたたいて、一斉に掛け声をかけて引き上げたところ、巨大な木彫りの仏像だった。それを現在の場所に移しまつったのが、この龍樹菩薩である。又、この時のはやし踊りが、蠣久浮立の起りとされている。
佐賀では、物の大きいことを“蠣久のじゅうじ菩薩のごと”とよくたとえる習慣がある。」 |