大迫磨崖大日如来坐像 県指定有形文化財
「そもそも磨崖仏とは崖に彫り込まれた仏像のことを指し、豊後大野を中心とする大野川流域には多くあります。特に平安時代末から鎌倉時代にかけ、多数の優品が作られましたが、その背景には、密教の流行や造顕を後押した豊後大神一族の存在、そして石仏を彫りやすい崖の存在があると言うわれています。
なかでも、石仏を彫りやすい崖は、いまから9万年前に起きた阿蘇山の巨大噴火にともなう火砕流が、冷えて固まってできた石、溶結凝灰岩でできており、大野川流域には多くあることが知られています。
この大迫磨崖仏もこのような背景をもって作られた仏ですが、他の磨崖仏といくつか異なる点があります。まずひとつめは、磨崖仏として、市内唯一の大日如来であるることです。大日如来とは、摩訶毘盧遮那仏とい光明遍照の仏として、太陽崇拝に基づいて生まれた仏です。大日如来は密教において二つの現れかたをし、ひとつは内在する理徳を示す胎蔵界大日如来で、法界定印を結んでいます。一方は、外に表現される智徳を示す金剛界大日如来で、智挙印を結んでいます。この大迫磨崖仏は法界定印、胎蔵界大日如来となります。
今ひとつの異なる点は、磨崖仏が彫られた崖が阿蘇山由来の溶結凝灰岩ではないことです。この崖は阿蘇由来の溶結凝灰岩に比べ、やわらかいのが特徴になっています。そのため、他とくらべて風化しやすく、仏像に塑土を盛って仕上げされました。仏像をよく見ると、納衣と呼ばれる着物が土を盛った塑土で表されていることに気が付きます。これは、この技法は石胎塑像と呼ばれ、この大迫磨崖仏の大きな特徴になっています。」 |