男池

2015.08.02


由布市庄内町阿蘇野




豊かな水を育む黒岳の森
「緑深い原生林の中を、清らかな名水が湧き出る黒岳。ここには、人びとが忘れかけているありのままの自然があります。

黒岳
 黒岳は全山が落葉広葉樹の樹林におおわれた、くじゅ山群唯一の山として有名。クヌギやコナラの若葉に始まる春の新緑、ブナやカエデ類がうっそうと茂る夏の深い緑、カエデ類やナナカマドなどで紅の錦を飾る秋の紅葉、そして落葉した山に白くかぶる冬の霧氷。ありのままの自然が四季を通じて見られます。
 緑深い原生林の中を長い月日をかけてゆっくり流れて湧き出る男池の名水は、黒岳の森がもたらす大切な贈り物です。

男池(おいけ)
 環境庁の『日本名水100選』にも選定された、黒岳北麓の美しい原生林内に湧く名水。清澄でまろやかな口あたりには定評があり、この水を求めて多くの人が訪れます。年中12.6℃の水温を保ち、1日約2万トンという豊かな湧出量を誇っています。

カクシ水
 男池から20分ほど登ると『カクシ水』の湧水があります。黒岳周辺の高地の湧き水はここだけで、流水はやがて地下に滲みこんでしまうので、『カクシ水』と呼ばれています。夏でも8℃という冷たい清水と涼しい木陰は、登山者にとって嬉しい憩いの場です。       

黒岳風穴群
 黒岳周辺には、大きな火山岩塊の隙間に冷たい空気の溜まった『風穴』が数多く見られます。中でも代表的な『奥芹風穴』は男池から2時間弱、黒岳と大船山の間の鞍部にあります。広い洞窟の中はとても寒く、7月頃まで氷が残っています。この風穴は、大正年間に蚕種を保存するための天然冷蔵庫として利用されました。
白水鉱泉(しらみずこうせん)
 湧水に炭酸ガスが含まれ発泡性があるので、砂糖を加えるとソーダ水のような味が楽しめます。浴用は胃腸疾患や皮膚病にも効能を発揮。付近には宿泊施設やキャンプ場などの施設も整っています。」

黒岳の自然 四季が織りなす多彩な風景
「黒岳一帯は、雨の多い湿潤な気候に恵まれ、うっそうとした自然林におおわれて、原生状態の貴重な森も多く残されています。山麓のクヌギ、ナラ類の雑木林や山腹から山頂近くにかけてのブナ、カエデ類の森、岩角地のコミネカエデ・ナナカマドの森、谷に発達するオヒョウ・アサガラの森などがあります。中でも大きな岩石のすき間に生えるツクシシャクナゲを伴うブナ林と、男池周辺からカクシ水一帯の谷に多く見られるオヒョウの林は特異な森です。湧水群もこの谷に集中しています。
 豊かな森に生活を託す動物も多く、昆虫類をはじめヤイロチョウ、ホトトギス類など野鳥の宝庫と呼ばれ、ヤマネやシカなどの哺乳類も生息しています。深山の森は動物たちにとって安住の地なのです。
 黒岳一帯の豊かな森はまた、男池の名水を育んでいます。森では長い年月をかけて落ち葉などが積もっては分解し、柔らかくて厚い土壌が作られます。そこへ激しい雨が降っても、土壌は森によって保護され、雨水はゆっくりと地下深くしみこんで行きます。
 森の営みが続く限り、黒岳の地下深くには莫大な量の水が貯えられ、雨が少々降らなくても、男池の湧出量が目に見えて減ることはありません。しみ込んだ水が男池の湧水群として湧き出すのに、1年ぐらいはかかると考えられます。こうして浄化された名水は、カルシウム(まろやか成分)やケイ酸(清涼感を増す成分)などを適量含んでいます。
 このように黒岳には素晴らしい自然があります。美しい森や湧水を、このままの姿でいつまでも残したいものです。
県道621号線沿いの入り口

遊歩道沿いの清流

下流側を望む

途中の湿地

橋を渡り

右下が男池

上の方に巨木

岩を抱いています

上から