高瀬石仏
2012.07.07

大分市高瀬




高瀬石仏 国指定史跡
「大分川支流七瀬川右岸の宇伽羅に位置する高瀬石仏は、数少ない石窟形式の磨崖仏です。凝灰岩を掘り込んだ石窟は高さ1.8m、幅4.4m、奥行1.5mの規模で、この中に五像が彫り出されています。
中央に結跏趺坐する胎蔵界大日如来像を中心に、向かって右には如意輪観音像が右膝を立てた半跏の姿で刻まれ、さらにその右には頭上に馬の頭を載せた馬頭観音像があります。また向かって左には六つの顔、六つの手と足を持って牛の背にまたがった大威徳明王像が、そしてその左にはことさら奇怪な姿をした深沙大将像が彫り出されています。
 とくに深沙大将像は逆立った頭髪、つり上った眉と見開いたドングリ眼に忿怒の表情を表わし、首には髑髏の首飾り、赤いしたおびと虎皮の袴を身に着けています。また、両脚と左手には蛇がからみつき、腹には少女らしい顔が描かれているのも異様です。この深沙大将は中国の玄奘(三蔵法師)が仏典を求めてインドを往復した時、砂漠に現われて守護した鬼神といわれます。異様な姿に表現されているのはこのためですが、腹部の人面は内に優しい気持ちを持っていることを表現したものです。高瀬石仏は平安時代後期、12世紀後半の制作と推定されており、県下の磨崖仏を代表する作品として貴重なものです。
 なお、石窟手前の崖面には小さな龕があり、そこには一本の蓮の茎から蓮華の上に、阿弥陀三尊仏の安坐する姿が彫り出されています。こうした一根三茎仏は、7世紀後半の白鳳時代に盛んな造仏形式でしたが、この地方では平安時代後期まで造られていたことがわかります。」

大分市教育委員会
ようやく訪ねた高瀬石仏

思ったより小さな石窟です

中央:胎蔵界大日如来像、左:大威徳明王像、右:如意輪観音像

左端:深沙大将像

右端:馬頭観音像